5月29日 最終日 鯖江〜長野〜横浜
畳敷きの部屋に布団を敷いて寝るのは久しぶりだったが、思いのほか熟睡できた。
朝6時から大浴場へ。サウナを軽めに2セットこなし、体調万全で旅の最終日をスタートさせる。夜通し雨が降っていたようだが、7時半に出発する頃にはほぼ上がっていた。
まずは金沢へ向かう。目的地は谷口吉郎・吉生記念金沢建築館と鈴木大拙館。金沢の街は兼六園を中心に文化施設が分散しているが、どこも歩いて回るには少ししんどい距離感がある。この2つも微妙に離れているので、中間地点に車を駐車し、そこからキックボードで巡回することにした。積んできたキックボードは旅先での散策に使おうと思って7年前に購入したもの。箱から出すのは今回が初めてで、最初はおっかなびっくり。谷口記念金沢建築館へ向かう途中、犀川の河川敷の遊歩道で蹴り出し方や体重移動の感覚を探りながら練習した。
谷口吉郎・吉生記念金沢建築館。谷口親子の設計思想が集約されている。館内の人影はまばら。ほとんどは外国人で海外での評価の高さが窺われる。
赤坂御所の一部が再現されていて、そこからの窓の外には水辺のある庭園が風景を映し出していた。
続いて鈴木大拙館。こちらもやはり水辺が設置されている。
いつの頃からか、美術作品の鑑賞より美術館の空間に興味を持つようになった。安藤忠雄や谷口吉生らが手がけたミュージアムは多いので、それぞれの建築家の設計に共通点を発見するようになると、美術館建築のユニークさに関心が高まり、建物自体を目当てに候補施設をリストアップしていくようになった。そしてこの鈴木大拙館で谷口吉生設計の美術館のほとんど(残るは資生堂アートハウスのみ)に訪れたことになった。ただ谷口建築の魅力の言語化はいまだに難しい。
鈴木大拙館から少し遊歩道を歩いていたら石川県立美術館にたどり着いた。予定していなかったがコレクション展のみ見学した。県立の美術館はどこの県も建物が立派で、かつ地域の文化を色こく反映しているようで楽しめる。
車へ戻る途中で駅そば風の気安い感じの蕎麦屋を見つけて昼食を取った。おろしそば650円。キックボードを車にしまって金沢を後にし、北へ向かう。
次の目的地は新潟県の谷村美術館。およそ140kmの移動、このたび最後の訪問施設だ。ナビは高速道路主体のルートを勧めてきたが、立山あたりでナビをキャンセル。時間に余裕があるので、高速を降りてゆっくり一般道を走ることにした。
途中、田園地帯を走り、立山連峰を背景に車の写真を撮る。
海岸線に沿いの一般道は入り組んだ崖に張り付くように続き、日本海が時折視界に現れる。景色を楽しみながら走っていると、富山以北では対向車線にバイクの数が急激に増えた。
よく見ると、どのバイクもヘッドライトの上にゼッケンを貼っている。SSTRの参加者たちだ。人気イベントらしいが、平日これほど多くのライダーが参加しているとは少し驚きだ。大型バイクが中心だが、オフロードタイプも目立つ。中でもハンターカブの多さが印象的だった。いつか自分も参加することがあるかもしれない。
木彫の仏像を展示する谷村美術館は、その独特な外観から多くの雑誌に取り上げられており、以前から訪問したい場所の一つだった。中に入ると洞窟のようないくつかの空間が、死角で遮られつながって構成されている。作品の大きさやフォルムに合わせて個別に洞窟を作ったようでピッタリと収まっている。異なる空間の連なりが外観に反映されているので、外からはボックスが組み合わさったような形容し難い不思議な形状になっているのだとわかった。

鑑賞しているうちに作品に見覚えがあることに気づいた。作者は熱海でも見学した澤田政廣である。熱海では仏像以外にも幅広いテーマの作品が展示されていたが、こちらは仏像中心だったため、最初は結び付かなかった。
併設の日本庭園、翡翠園も入場券で見れるので一応鑑賞した。おととい足立美術館の庭園を見たばかりなので、比較しては悪いのだが足立美術館の凄さがわかるような気がした。
時刻はまだ16時前。これで今回の旅の予定はすべて終了した。
あとは帰るだけだが、単純に移動だけの高速利用では深夜割引を利用したい。0時過ぎに関東圏へ入るか、朝方に帰宅するかを考えた結果、長野市内まで移動して、早めの夕食を取って、ネットカフェでMotoGPのプラクティス配信を見ながら時間調整することにした。

長野市内、ネットカフェ近くにいい感じの定食屋さんに遭遇。
満腹になって、思いのほか眠ってしまってmotogpはほとんど見れなかった。22時に長野を出発。給油してから高速道路へ入る。
573.5km走行 24.7ℓ給油 区間燃費 23.2km/ℓ
仮眠のおかげで眠気はすっかり消えていた。休憩なしで一気に3時間半ほど走り続け、自宅に到着した。鯖江から長野を経て自宅まで607km。
今回の旅の総走行距離は2272km。訪問した施設は16か所(クルーズ含む)。
車を買い替えて初めての旅。山陰はそれなりに遠かったが、高速道路ではACCが有効で、とても快適で疲労の軽減に役立った。もうACCのない車では遠出はしたくないとさえ思えた。
最初に述べたように、今回の旅は計画の大枠だけ決めて出かけたが、行きたいところは全て回ることもでき、宿泊も当日予約でもなんとかなった。充実感の残る5日間だった。
昨日訪れたルーブル屋外彫刻館も
今日の美術館巡りはここまで。

しかし館内に入ると印象は一変した。展示作品はルーブルの認証印のある由緒正しいレプリカで、ガラスのピラミッドを模した天井から差し込む自然光が美しい陰影を生み出している。名品のフォルムが際立ち、思いのほか見応えがあった。
残念だったのは滞在中ほとんど風が無かったことだ。本来なら風を受けて動くはずの作品群は静止したまま。せっかくならダイナミックに躍動する姿を見てみたかった。音もなく佇む様子はそれはそれで美しいのだが、周囲の自然が雄大すぎるせいか、作品がどこかこぢんまりと見えてしまった。
ショップにあったフクロウの木彫りが気に入ったので購入した。その際、スタッフの方から作品や施設の成り立ちについて話を伺った。神奈川から来たことを伝えると驚きながらも喜んでくださった。運営は大変らしいが、応援したくなる施設である。
開催中のポップアート展は、作品の表面的な軽やかさの背景にあるコンセプトを理解してこそ面白さが見えてくる。しかし今日は時間がない。本当に駆け足で30分ほど鑑賞しただけで会場を後にした。
舞鶴の軍港クルーズは約30分。湾内に停泊する艦艇は少なく、イージス艦を除けば地味な支援艦ばかりだが、他の軍港とは異なり周囲を囲む豊かな自然の景観と、引揚港という歴史的背景もあって、独特の雰囲気を感じた。これで横須賀から始まった軍港クルーズは、呉、佐世保そして舞鶴と全部を体験することができた。特に軍事マニアというではないのだが、過去の戦争の学習の一環で出会った「軍港めぐり」というテーマを達成し、日本の歴史と現在の一面を一つ知ることができたと思っている。
宿自慢の大浴場は、地元のお年寄りたちの社交場になっていてにぎやか。サウナは温度こそ高くないものの、不思議とよく汗が出る。短めに3セットで十分だった。
こういう一癖あるアプローチは安藤建築にありがちかな思う。入館する前に「心構えを正して入館してください」とでも問いかけているような面倒臭い感じ。これこそ安藤忠雄の建築の特徴なんだと妙に納得した。
企画展にはあまり心を惹かれなかったため、館内をひと通り巡るに留めた。ここ松江が一番遠い訪問地で、旅の折り返し地点となる。朝ドラの舞台にもなった街をのんびりと歩いてみたかったが、次の目的地の足立美術館に15時までには入場したいので、踵を返し米子方面へ向かった。
ただ、今の自分にはまだ少し早かったのかもしれない。心を動かされる感覚が得られない。来館者の多くは高齢者で、大塚国際美術館にも通じる「人生のうちに一度は訪れておきたい名所」という格式めいた雰囲気がある。いわば冥土の土産リストの一角を占める場所なのだろう。ここで少し土産を物色した。
特に興味を引かれる場所も見当たらなかったのでホテルへ戻った。






地元民に愛されている佇まい。疲れも癒えて入浴料だけでは申し訳なく思い、缶ビールで水分補給、少しだけ売上げに貢献。身も心もひと息ついた。
帰りも行きと同じ会社で同額なので、またあの窮屈さを覚悟していた。しかし乗り込んでみるとバックシェルタイプ・スライディングシートという全く違う仕様だった。固定されたシェルに収まっている椅子が電動で前方向にスライドしてリクライニング状態になるという仕組みで、前席の影響は受けない。ブランケット付属で同じ金額とは思えないほどゆったりできる。快適さはケタ違いでほとんど寝て過ごすことができた。往路では仕様の知識不足を痛感させられたが、答えは案外早く出たようだ。