秋の信州アート散策 Day3

9月22日 最終日、軽井沢周辺を回る。

最初は富弘美術館。

訪問地選びは全国美術館巡りの案内本、CASAブルータスの美術館特集を参考にしている。こちらは建築設計が見どころということで選定。作家の星野富弘さんについては草花の水彩画家という予備知識だけで特に下調べもせずに訪問した。

美術館は草木湖畔を望む高台にある1階建て。外観に特徴は見られないが、内部は大小の円形の展示室が泡のように隣接していて、円弧の内壁を伝いながら鑑賞して回る。

詩と草花の水彩画で構成されたA4サイズくらいの作品が展示されている。星野氏は事故によって手足が麻痺となってから、知人らの励ましに応えるため口で筆をくわえ絵をかくことに挑戦した。絵はとてもみずみずしく、詩は少しもの悲しい。その対比に作家の表現意欲の両面性が感じられた。明るい空間ではあるが儚い印象の美術館だった。

来た道を戻りつつ渋川方面へ。街道沿い、テレビでみた絶滅寸前のレトロ自販機コーナーに遭遇。うどん1杯300円を購入。間食にちょうどいいボリューム、しっかり熱々。素朴な手作りの味わいが人気が続く理由と思う。

日本各地にいくつかスポットが残っていて人を集めているようだが、機械が故障したら終わりらしいので大事にして残り続けて欲しいと願う。

渋川伊香保 牧場に隣接する自然豊かな環境にある原美術館ARC。黒い木造の展示棟ユニットが連結して公園敷地に広がっている。ピラミッド状の採光屋根が象徴的な外観、磯崎新設計。

続いて軽井沢に向かってセゾン美術館。荒川修作とマドリンギンズの企画展が開催中だった。前回の旅で奈義現代美術館で荒川作品を体験しているし、岐阜の養老天命反転地も行きたいと思っている。いずれも空間だったり環境的な体験型の作品に興味を持っているのだが、この展示では概念図のようなグラフィック作品が中心で、期待したものとは少し違った。作家の思考に理解が及ばず難解さにお手上げ。

佐久まで足を伸ばし最後の訪問地、川村吾蔵美術館。以前横須賀美術館で牛の標本彫刻の展示を見て知った。隠れた巨匠というべき彫刻家の故郷に立てられた施設。

知られざる美術館は閑散としていて、他県からの訪問を告げると歓待された。説明ビデオ2本の視聴、展示室の導入部まで丁寧にアテンドしていただいたのだが、だいぶ疲れていたのでそっけない態度をしていたかもしれない。16時半、全行程終了。

帰路はそのまま南下して中央道ルートも考えたが、検索した通りに佐久インターから上信越自動車道へ。すぐに横川SAで小休止、横川といえば峠の釜飯。今日初めてのまともな食事だった。それと2度目の給油、リッタ−200円。トリップ458.2km  10.58リットル(2000円分の給油のため満タン法の燃費計測できず)
平日の夕暮れ時ゆえ混雑は避けられない。関越から圏央道に入る前後、そして相模原愛川で高速を降りてからしっかり渋滞にはまった。横川から一度も休憩せず走りづめということもあり疲れがどっと来た。21時に無事帰宅。 

最終日の走行距離443km 歩行距離4.3km

これまで幾度となく走ってきた信州だったが、場所の記憶は薄く明確な痕跡がないのに気がついた。そして無性に何かを取り返したいような衝動にかられ、改めて信州を美術館を巡りながら散策して来た。

農民美術や出身作家の穏やかで奥ゆかしい作品には、信州の人々の人間性が表れているように感じ癒された。一方で信州の風土とは無関係であろう現代美術にも多く触れた。時に難解さに困惑しつつリゾート気分でなんとなく受け入れた。価値あるものに素晴らしいと感動するのは素直だが、素朴に湧き上がる疑問や違和感など、感じ方を偽らず自分なりに解釈した方が強く記憶に残るような気がする。

訪れた記録はあっても記憶が空虚だった信州にだいぶ印象を残すことができた。そう感じた2泊3日だった。今回の総走行距離1011km   美術館12件